スマホの“時間”より気にしたいこと—「やめられないゲーム」と心の不調の関係
「うちの子、スマホ長すぎますよね」
外来でも家庭でも、まず出てくるのは“時間”の話です。たしかに長時間は気になります。でも実は、時間だけ見ていると大事なところを見落とすことがあります。
最近の研究で、余暇のスクリーン時間(遊び目的のスマホ・PC・テレビなど)と、インターネットゲーム障害(Internet Gaming Disorder:IGD)の“依存的な使い方”を分けて調べたものがありました。結論はシンプルです。
「長い」も問題になり得る。
でも、もっと強く心の不調と結びついていたのは「やめられない」ほうでした。
■ まず整理:「スクリーン時間」と「依存」は別物
この研究は、スクリーンの使い方を2つに分けています。
1)余暇スクリーン時間
勉強や授業ではなく、娯楽としてのスマホ・PC・タブレット・テレビなどの時間。
2)インターネットゲーム障害(IGD)
ざっくり言うと、「やめようと思ってもやめられない」「やめるとイライラする」「生活に支障が出ても続ける」など、依存の特徴がそろっている状態です。時間が短くても起こり得ます。
ここが今回のポイントです。
“長時間=依存”ではありません。
■ Dengらの研究:中高生1.3万人で何を調べた?
中国・四川省の公立学校20校で、中高生13,240人(平均15歳くらい)を対象に調査した研究です。
・余暇スクリーン時間は自己申告
・IGDは「IGD尺度(9項目)」で評価
・心の状態は、心理的苦痛、抑うつ、被害的な考え(パラノイア)、不眠、自殺念慮などを含む複数の尺度で評価
※この研究は「ある時点での比較」(横断研究)なので、「原因と結果」を断言はできません。けれど、臨床感覚とも重なる示唆が多い内容です。
■ 結果:スクリーン“時間”より、IGDのほうが強く関連
研究では、余暇スクリーン時間が「1日2時間超」の人が約半数いました。
一方で、IGDに該当する人は1〜2%程度と少数でした。
それでも、心の不調との結びつきはIGDのほうがはるかに強く、
余暇スクリーン2時間超は「少しリスクが上がる」程度、IGDは「グッと上がる」レベルの関連が示されました。
具体的には、余暇スクリーン時間が長い人は
・抑うつ
・被害的な考え
・自殺念慮
と関連がみられ、IGDはそれらに加えて
・心理的苦痛
・不眠
も含め、幅広い項目で強い関連が出ていました。
さらに、余暇スクリーン時間が長く、IGDもある人が最も高い関連を示しました。
ただし「相乗効果で爆発的に悪化する」というより、時間とIGDがそれぞれ独立に効いている(別々に注意が必要)という解釈に近い結果でした。
■ いちばん重要:「時間が短くても依存はあり得る」
この研究で印象的なのはここです。
IGDに当てはまった人の約3割は、余暇スクリーン時間が「2時間以下」でした。
つまり、時間が短めでも、依存の特徴がそろっている子はいる。
逆に言うと、時間が長くても「依存とは限らない」子もたくさんいる。
だから、時間だけで白黒つけると、本人も家族も苦しくなりやすいんです。
■ 家庭でできる「揉めにくい」3つの工夫
1)まずは“睡眠”を守る(ここが最優先)
ゲームやスマホの影響が一番出やすいのは睡眠です。
夜更かしが続くと、気分の波、不安、イライラ、集中力低下が一気に出やすくなります。
「何時までOK?」の話は、まず睡眠から逆算するのが現実的です。
2)時間のルールは「本人の困りごと」とセットで決める
「1日2時間!」と数字だけ押しつけると、だいたい揉めます。
それより、
・朝起きられない
・授業に集中できない
・成績が落ちた
・家族とぶつかる
・夜眠れない
など“困っていること”を先に確認し、「そこを改善するためのルール」にすると通りやすくなります。
3)“やめ方”を先に決める(終わりが一番むずかしい)
始めるより、終わるほうが難しい子は多いです。
・キリのいい所で終える合図(1試合で切り上げる、アラームを鳴らす)
・終わった後のルーティン(風呂→明日の準備→就寝)
この“出口設計”があるだけで、依存の形に傾きにくくなります。
■ 相談の目安(放置しないほうがいいサイン)
次のような状態が続く場合は、「意志が弱い」の問題にしないほうがいいです。
・やめようとすると強いイライラ/暴言が出る
・隠れてプレイ、嘘が増える
・睡眠が崩れて朝起きられない、遅刻・欠席が増える
・気分の落ち込み、不安、希死念慮(死にたい気持ち)が出ている
・課金やトラブルが止まらない
・家族関係が限界に近い
特に「自傷」「自殺念慮」がある場合は早めの受診・相談が必要です。急を要する場合は救急も含めて安全を優先してください。
国分寺イーストクリニック(精神科・心療内科)では、ゲームやネットの問題を“時間”だけで裁かず、睡眠・気分・学校生活・家庭環境まで含めて整理し、現実的な落としどころを一緒に考えます。
■ まとめ
・スクリーン時間が長いほど、心の不調と関連しやすい傾向はある
・ただし、より強く関連していたのは「IGD(やめられない使い方)」
・時間が短くても依存はあり得る。だから“時間だけ”で判断しない
・まず睡眠を守り、困りごとベースでルールを作るのが近道
参考文献
Deng Q, et al. Leisure Screen Time, Internet Gaming Disorder, and Mental Health Among Chinese Adolescents: Large-Scale Cross-Sectional Study. J Med Internet Res. 2026.