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フラッシュバックのセルフケア|心が過去に引き戻されたときの安全な対処法

■1. フラッシュバックとは?

ふとした瞬間、強い不安や恐怖が急にこみ上げ、「あのとき」に戻ってしまったように感じる——。
これが「フラッシュバック」です。
過去のつらい体験が、まるで“今”起こっているかのように再生され、映像や音、匂い、身体の感覚としてよみがえります。心拍数が上がったり、手が震えたり、息が浅くなったりすることもあります。

これは心が弱いからではありません
危険から身を守ろうとする、脳の自然な防御反応です。大切なのは、「起きたときにどう落ち着くか」「起きる前に気づくこと」です。

 

■2. 今すぐできるセルフケア(発作が起きたとき)

① 安全な場所を確保する

まずは、安全を優先しましょう。
車の運転中ならすぐに停車を。刃物や高所など、危険な場所から離れましょう。人混みでは、出口や静かなスペースを意識して。

② 呼吸を整える「4-6呼吸法」

鼻から4秒吸って、口から6秒かけて吐く。
この「4-6呼吸」を1〜2分行います。吐く息を長くすることで、自律神経が落ち着き、体の緊張がゆるみます。

③ グラウンディング:今に意識を戻す

頭の中で過去の映像が繰り返されるときは、「いま、この場所」に注意を戻します。
「5-4-3-2-1法」という方法があります。

  • 見えるものを5つ
  • 触れられるものを4つ
  • 聞こえる音を3つ
  • 匂いを2つ
  • 味わえるものを1つ

順に意識を向けることで、現実感を取り戻しやすくなります。

④ 身体感覚を使う

冷たい水で手首を冷やす、足の裏で床を踏みしめる、椅子の背にもたれて体重を感じる——。
身体感覚を意識すると「ここにいる自分」を実感できます。

⑤ 言葉で「今」を確認する

心の中でこう言ってみましょう。

「これはフラッシュバック。私は2025年10月、ここにいる。」

時間と場所を言葉にすると、脳が「過去ではない」と理解しやすくなります。

発作を減らすための「日常の備え」

フラッシュバックは、疲れや睡眠不足、ストレスなどでも起こりやすくなります。
日常の小さな工夫で、再体験の頻度や強さをやわらげることができます。

① トリガー(引き金)をメモする

「どんな状況で起きやすいか」を知るために、
発作の前後の出来事・気分・身体の反応などを簡単に記録してみましょう。
同じ匂いや場所、人の言葉など、共通点が見えてくることがあります。

② 安全カードを作る

名刺サイズのカードに、

  • 落ち着く手順(呼吸→グラウンディング→冷却)
  • 連絡先(家族や医療機関)
  • 薬の使い方(処方がある場合)
    を書いておくと、いざというとき安心です。

③ 生活リズムを整える

睡眠・食事・運動のリズムは、心の安定を守る“土台”です。
寝る90分前はスマホや強い光を避け、朝は同じ時間に起きて太陽の光を浴びる。
10分の散歩でも、自律神経が整いやすくなります。

④ 情報との距離を調整する

SNSやニュース、映画などの刺激がトリガーになることもあります。
気分が落ち着いているときに見る・事前に内容を調べておくなど、**「自分で選ぶ」**ことが大切です。

 

■3. 自分へのやさしさを忘れない

「また怖くなってしまった」と感じても、自分を責める必要はありません。
フラッシュバックが起きるのは、あなたがつらい経験を生き抜いてきた証でもあります。

うまくいかない日があっても大丈夫。
そんなときは、心の中でそっとこう声をかけてみてください。

「こんな反応は、誰にでも起こりうること」
「いまの自分なりに、できることをやっている」
「少しずつ落ち着こうとしている、それでいい」

無理に前向きにならなくても構いません。
「今日はこれで十分」と認めてあげることが、回復を支える力になります。

 

■4. セルフモニタリングで「調子」を色で見える化する

フラッシュバックや不安は、突然起こるように思えても、実は「予兆」があることが多いものです。
それに早めに気づくために、色を使ったセルフモニタリングを取り入れてみましょう。

気分・感情の傾向 補足/注意点
🟢 緑 安心・リラックス・回復傾向 緑色環境(自然の緑など)が血圧・心拍数を下げる可能性あり。
🔵 青(淡・中) 落ち着き・静けさ・集中しやすい状態 青は「ポジティブかつ低覚醒(落ち着いた)感情」との関連が報告されています。
🟡 黄色 活気・軽い興奮・明るさ、または疲労しやすい状態

黄色/オレンジ系は「ポジティブかつ高覚醒」感情との関連あり。ただし、使い方によっては刺激過多・疲れやすい可能性も。

🟠 オレンジ 少し緊張・高い覚醒状態・「乗せられている」感じ 黄色に近く、高めの覚醒・活気がある状態の指標に。
🔴 赤 強い緊張・ドキドキ・警戒・突発的な反応あり 赤色が注意を引き、心拍数・覚醒を増す場合があるというデータあり。 強すぎると「回避」「警戒」モードになる可能性も。
⚫ グレー(暗め) 無感情・鈍化・気分が “抜けている” 感 系統的レビューでは「暗い色・彩度低め」の色がネガティブな感情(悲しみ・希薄さ)と結びつきやすいという報告あり。
🟤 茶色 落ち込み・疲れ・エネルギー低下傾向 茶色・くすんだ色は高覚醒ではなく「活動を控えめにしたい/空気を休ませたい」状態と関連付けられてきており、デザイン・マーケティング研究でも“元気が出ない”と感じる色のひとつ。

 

夜寝る前や朝起きたときに、自分の調子に合う色を一つ選ぶだけでもOK。
「今日はオレンジだから、少し早めに休もう」「昨日より緑が増えてきた」といった小さな変化に気づけるようになります。

この記録を続けることで、
「どんなときに調子が落ちやすいか」「どうすれば戻りやすいか」が見えてきます。
医療機関に相談するときにも、色の記録は状態を伝える良い資料になります。

*補足・使い方のポイント

  • この表は「色=そのまま感情」という絶対的なものではなく、「この色を選んだ/感じたとき、こういう“気分の傾向”があることが多い」というヒントとして利用してください。
  • セルフモニタリングにおいて、感じた「色」を選ぶことで、言語化しにくい“体感・気分”を可視化しやすくなります。
  • 色の選択は文化・個人の経験・照明条件・画面表示によって変わるため、「自分にとっての色の意味」を少しずつ記録しておくと、より有効です。
  • 色を見て「ゆるめる時間をとろう」「今日は少し休もう」といった“動き”につなげることで、セルフケアの実効性が高まります。

 

 

 

■5. 医療機関に相談すべきサイン

  • 自傷や自殺の考えが浮かぶ
  • 強いパニックで外出できない
  • 記憶の抜け落ちや現実感の低下が続く
  • 生活(仕事・学校・家庭)に大きな支障がある

こうした場合は、早めに精神科・心療内科で相談を。
記録している色の変化や発作の頻度を伝えると、診察がスムーズになります。

 

■6. まとめ

フラッシュバックは、心が危険を感じて“過去の防衛反応”を再生してしまう現象です。
でも、正しいセルフケアとセルフモニタリングを身につけることで、少しずつ波を穏やかにできます。

呼吸・グラウンディング・身体感覚・色の記録。
それらを毎日少しずつ取り入れながら、自分を責めずに、「今日はここまでできた」で十分です。

あなたの回復のペースは、あなた自身が決めていいのです。
そして、必要なときは専門家の力を借りてください。
セルフケアは、「ひとりで頑張ること」ではなく、「自分を大切にすること」から始まります。

 

監修

国分寺イーストクリニック 酒井

 

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