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コーヒーとお茶は認知症リスクと関係する?―JAMA大規模追跡研究から、心療内科的に「上手な飲み方」を考える


外来でよくいただく質問のひとつが「コーヒーって体にいいの?」「飲みたいけど不眠や不安が心配」です。
今回は、コーヒー(カフェイン入り/デカフェ)とお茶の摂取量が、認知症リスクや認知機能とどう関係するかを検討した、JAMA掲載の大規模研究を紹介します。結論から言うと、“体に良いか悪いか”の二択ではなく、体質や症状に合わせた調整が大切、という話になります。

 

 ■この研究のポイント(先に要点)
・カフェイン入りコーヒーを多く飲む人ほど、認知症リスクが低い「関連」が示されました。
・お茶も同様に、認知症リスクや認知面の指標に好ましい関連が示されました。
・デカフェ(カフェインレス)コーヒーは、認知症リスクとの明確な関連が示されませんでした。
・ただしこれは「観察研究(関連を見る研究)」で、コーヒーやお茶が認知症を“予防する”と断言できる研究ではありません。
・心療内科の臨床では、不眠・不安・動悸がある方は、量だけでなく時間帯や飲み方の工夫が重要です。

 

 ■研究の概要(どんな研究?)
米国の2つの長期追跡研究(女性のNurses’ Health Study/男性のHealth Professionals Follow-up Study)のデータを用いた前向きコホート研究です。
食事内容は2〜4年ごとに繰り返し評価され、コーヒーを「カフェイン入り」と「デカフェ」に分けて解析している点が特徴です。

対象:131,821人
追跡:最長43年(中央値36.8年)
主要評価:認知症(死亡記録や医師診断などから把握)
副次評価:主観的認知低下(「もの忘れが増えた気がする」などの質問票スコア)/一部では電話による認知機能検査

 

 ■主な結果(何がわかった?)
追跡中に認知症が確認されたのは11,033例でした。

1)カフェイン入りコーヒー
飲む量でグループ分けしたとき、最も多いグループは最も少ないグループに比べて、認知症リスクが低い関連が示されました(ハザード比0.82=“約18%低い”という意味合い)。
また「主観的認知低下」も、カフェイン入りコーヒー摂取が多い人で少ない傾向が示されました。

2)お茶
お茶の摂取量が多い人でも、同様に好ましい関連が示されました。

3)デカフェ(カフェインレス)コーヒー
デカフェについては、認知症リスクが低い/認知機能が良い、といった明確な関連は示されませんでした。

4)“どれくらい”が目安?(量と関連は直線ではない)
摂取量が増えれば増えるほど一直線に良い、というより、関連が目立ったのは
・カフェイン入りコーヒー:1日2〜3杯くらい
・お茶:1日1〜2杯くらい
という「中等量」あたりでした。

 

 ■心療内科の視点:カフェインは“合う人・合わない人”がはっきり出ます
今回の研究は「脳の健康」に関して興味深い示唆があります。一方で、心療内科・精神科の臨床では、カフェインが症状に影響する方も少なくありません。

・不眠がある方
コーヒーや濃いお茶で寝つきが悪い/夜中に目が覚める、という方は、量よりも「午後以降を控える」「夕方からはデカフェに切り替える」など、時間帯調整が効果的なことがあります。

・不安、動悸、パニック症状がある方
カフェインで動悸や手の震えが出ると、その身体感覚が不安を呼び、悪循環になることがあります。体感的に悪化する場合は、無理に続ける必要はありません。

・減らすときは“段階的に”
急にゼロにすると、頭痛やだるさなどが出る方もいます。気になる場合は少しずつ調整するのが無難です。

 

 ■この研究から「言えること/言えないこと」
言えること:長期の大規模データで、カフェイン入りコーヒーとお茶の摂取が、認知症リスクや認知面の指標と“好ましい関連”を示した。
言えないこと:コーヒーやお茶を飲めば認知症を予防できる、という因果関係の断定。生活習慣(睡眠、運動、喫煙、持病など)全体の影響を完全に取り除くことは難しいため、解釈には注意が必要です。

 

 ■まとめ(当院からのメッセージ)
コーヒーやお茶は、楽しみとして続けやすい習慣です。今回の研究は、カフェイン入りコーヒーとお茶が認知症リスク低下と関連する可能性を示しました。
ただし、心療内科の臨床では“不眠や不安に響くかどうか”がとても大事です。健康のために我慢して飲むのではなく、体質と症状に合わせて、量・時間帯・デカフェの活用などを調整していきましょう。

【参考文献】
Zhang Y, Liu Y, Li Y, et al. Coffee and Tea Intake, Dementia Risk, and Cognitive Function. JAMA. Published online February 9, 2026. doi:10.1001/jama.2025.27259