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抗うつ薬で「汗が止まらない」…その原因と対策を知ろう

■はじめに

あなたは、抗うつ薬を飲み始めてから「汗をかきやすくなった」「夜中に寝汗で目が覚める」と感じたことはありませんか?
実は、抗うつ薬による発汗(薬剤性発汗)は、治療中によくみられる副作用の一つです。放っておくと不快感や不眠につながることもあります。今回は、その原因と対応法をわかりやすく解説します。

 

1|なぜ抗うつ薬で汗が増えるの?

抗うつ薬は、脳内のセロトニンやノルアドレナリンを増やして気分を整える働きがあります。
ところが、これらの神経伝達物質は体温の調整や自律神経にも関係しているため、汗腺への刺激が強まると汗が出やすくなるのです。
とくにSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などで発汗が増えることがあります。

 

2|どのくらいの人に起こる?

報告によると、抗うつ薬を使っている方の約4〜22%に発汗の増加がみられます。
薬の種類や体質によって違いがあり、季節やストレスなどの外的要因も影響します。

 

3|薬剤別・発汗リスクの目安(文献の傾向から)

※臨床の目安であり個人差があります。

薬理群

代表薬

発汗リスクの傾向

SSRI

セルトラリン、パロキセチン、エスシタロプラム など

増加(クラスとしてリスク上昇)

SNRI

ベンラファキシン、デュロキセチン など

増加

三環系抗うつ薬

アミトリプチリン など

増加(抗コリン作用も)

*発汗を増やさない可能性が高いもの

フルボキサミン、ボルチオキセチン

プラセボと差なし(メタ解析)

 

4|受診を検討すべき「要注意」サイン

以下のような症状を伴う場合は、セロトニン症候群の可能性があるため、すぐに受診してください。

  • 発熱、興奮、意識の混乱
  • 筋肉のこわばりや震え
  • 強い発汗や脈の異常

 

5|自分でできる「汗対策」

薬を中断する前に、まずできることから始めてみましょう。

  • 記録する:汗が出る時間帯・場所・きっかけ(暑さ・カフェイン・緊張など)をメモしておく。
  • 環境を整える:涼しい服装、除湿・冷房の活用、寝具の通気性を改善。
  • 生活の工夫:辛い食事・アルコール・タバコ・過度な運動を控える。
  • 局所対策:腋の下や手などの汗には塩化アルミニウムローションなどの外用薬が有効な場合もあります。

 

6|発汗の重症度をチェック(HDSS)

多汗症の評価によく使われるのが「HDSS(Hyperhidrosis Disease Severity Scale)」です。
これは日常生活にどのくらい支障が出ているかを4段階で自己評価する方法です。

スコア

症状の程度

生活への影響

1

汗はほとんど気にならない

生活に支障なし

2

時々気になる程度

ほとんど支障なし

3

しばしば気になる・恥ずかしい

服装や人前での行動に支障あり

4

常に大量に汗をかく

生活全般に大きな支障あり(着替えや睡眠にも影響)

目安:スコアが2以上の場合は医師への相談をおすすめします。
発汗が仕事・睡眠・外出などに支障している場合、薬の調整や環境改善で楽になる可能性があります。

 

7|医師に相談したほうがいいケース

  • 汗の量が明らかに増え、日常生活に影響している
  • 体温変化や脈拍異常など、他の症状も伴う
  • 夏場に体温が下がりにくく、のぼせ・疲労感が強い

薬の種類や用量の見直しで改善することがあります。自己判断で中止せず、まずは相談を。

 

8|まとめ

  • 抗うつ薬による発汗は珍しくありませんが、つらい場合は治療の妨げになる前に相談を。
  • 「暑いから仕方ない」と我慢せず、生活改善・服薬調整で対策を。
  • 発汗が急に強まったり、発熱や震えを伴う場合は早急に受診しましょう。

 

監修

国分寺イーストクリニック 酒井 遼