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自分でできるMBCT(マインドフルネス認知療法)~反芻思考を減らす方法~

はじめに

私たちは、つらい気分になったとき「なぜ自分はこうなったのだろう」「また失敗するのではないか」と頭の中で繰り返し考えてしまうことがあります。こうした反芻(はんすう)思考は、一時的には問題を解決しようとする努力のように見えますが、実際には気分をさらに落ち込ませたり、不安を強めたりしてしまいます。

マインドフルネス認知療法(MBCT)は、反芻思考の悪循環を断ち切り、気持ちを整える方法として注目されてきました。専門家のもとで行うプログラムが理想ですが、基本的な考え方や練習は日常生活でも応用できます。ここでは「自分でできるMBCT」として、そのポイントを紹介します。

 

MBCTとは?

MBCTは「認知行動療法(CBT)」と「マインドフルネス瞑想」を組み合わせた心理療法です。1990年代にイギリスの心理学者たちによって開発され、特に「うつ病の再発予防」に効果があると実証されてきました。

従来のCBTが「考えの内容を修正する」ことを重視するのに対して、MBCTは「考えのとらえ方を変える」ことを目的とします。つまり、浮かんでくる思考を無理に消そうとするのではなく、「思考は思考にすぎない」と気づき、距離を取る練習なのです。

 

反芻思考とどう関係するの?

反芻思考は、過去の失敗や未来の不安を「頭の中でぐるぐる繰り返す」状態です。このとき、私たちは思考の中にすっかり巻き込まれてしまい、まるでそれが現実のすべてであるかのように感じてしまいます。

MBCTは、この「巻き込まれる」状態から抜け出すトレーニングです。思考や感情を客観的に観察できるようになると、「これはただの考えにすぎない」と気づき、反芻にとらわれにくくなります。結果として、気分の落ち込みや不安が和らぎ、生活の中で大切なことに意識を向けやすくなります。

 

日常でできるMBCTの基本練習

  1. ボディスキャン

ベッドやヨガマットに横になり、目を閉じて体の感覚に注意を向けます。
足の指先から順番に、ふくらはぎ、太もも、お腹、胸、腕、顔…と、体を少しずつスキャンするように観察します。

  • 「しびれているな」
  • 「重たい感じがする」
  • 「何も感じない」

どんな感覚もそのまま認め、ただ観察します。評価したり判断したりせずに、「気づくこと」自体を目的とします。

  1. 呼吸瞑想

椅子に座って背筋を伸ばし、自然な呼吸に注意を向けます。息が入ってくるときの空気の流れ、吐くときの胸やお腹の動きを感じます。
雑念が浮かんできても大丈夫です。「あ、考えていたな」と気づいたら、やさしく呼吸に注意を戻します。この「気づいて戻す」動作こそが、反芻を手放す練習です。

  1. 三分間呼吸空間

忙しい日常でも取り入れやすい短い練習です。

  1. 今の気分に気づく:「イライラしているな」「疲れているな」と、ありのままを認める。
  2. 呼吸に注意を向ける:数回、呼吸の感覚を味わう。
  3. 体全体を感じる:足の裏が床に触れている感覚、肩の重さなどを観察。

わずか3分でも、頭の中で考えを繰り返すループを中断できます。

  1. マインドフル・ウォーキング

歩くときに、足が地面につく感覚、体のバランスの変化を観察します。散歩の時間を「考えごとの時間」ではなく「体の感覚に気づく時間」に変えてみましょう。

 

練習を続けるコツ

  • 毎日少しずつ:1回30分が理想ですが、まずは5分でも十分です。
  • 「うまくやる」ことを目標にしない:雑念が出るのは自然なことです。雑念に気づいた瞬間が練習の成功です。
  • 習慣化する:朝起きた直後や寝る前など、時間を決めて行うと継続しやすくなります。

 

効果を実感するには

研究によると、MBCTを数週間継続することで、

  • 反芻思考の減少
  • 気分の安定
  • 不安や抑うつの軽減
    が報告されています。

ただし「即効性がある魔法の方法」ではありません。練習を積み重ねることで少しずつ効果を実感できるものです。

 

気をつけること

  • トラウマ体験がある方や、不安・抑うつが強い時期には、瞑想がかえってつらく感じられることもあります。その場合は、無理をせず短時間にとどめたり、専門家と一緒に行うことをおすすめします。
  • MBCTは「症状をなくす」ことを直接の目標とするのではなく、「今ここにある体験に気づき、反応の仕方を変える」ことを目的としています。

 

まとめ

マインドフルネス認知療法(MBCT)は、反芻思考を和らげ、気持ちを安定させる方法として確かなエビデンスがあります。ボディスキャンや呼吸瞑想、三分間呼吸空間などのシンプルな練習を通じて、私たちは「考えに巻き込まれる自分」から「考えを観察できる自分」へと変わることができます。

大切なのは、上手にできるかどうかではなく、「気づきに戻ること」を繰り返すことです。毎日の生活の中で少しずつ取り入れながら、自分の心との新しい付き合い方を見つけてみてください。