抑うつ状態・極期の過ごし方 。今は休むことが治療です。
「何もしたくない」「朝起きるのがつらい」「自分が嫌い」「消えてしまいたい――」。
それは甘えではありません。抑うつ状態は、こころと体が疲れ果てて、もうこれ以上がんばれないというサインです。
とくに「極期(きょっき)」と呼ばれる症状のピーク時には、「日常生活を送ること」すら困難になります。そんな時期を、どう過ごせばいいのでしょうか。
■ 抑うつ状態の「極期」とは?
抑うつ状態とは、こころのエネルギーが極端に低下している状態です。
特定の出来事(仕事のストレス、人間関係、喪失体験など)をきっかけに起こることもあれば、理由がはっきりしないまま生じることもあります。
極期では、こんな状態が起こり得ます:
- 何も楽しくない、感情が動かない
- ベッドから起き上がれない
- 食欲がない、または食べすぎる
- 人と話すのがしんどい
- 涙が止まらない、逆に泣くこともできない
- 将来が見えない、「死にたい」と思ってしまう
こうした状態は脳の神経伝達物質の働きが鈍っている「病的な状態」です。努力や気合でどうにかできるものではありません。
■ 極期に大切な3つの姿勢
- 「休むことは治療」と考える
調子の悪いときに無理をすると、むしろ症状は悪化します。
今は「治すために休む」ことが最大の仕事です。
- 動けないなら動かなくてよい
- 起きられないなら横になっていてよい
- 考えられないなら考えなくてよい
「しっかり休んでいる自分は、ちゃんと治療している」と自分に言い聞かせてください。
- 「何もしない日」を許す
人は「今日は何もできなかった」と思うと、自分を責めがちです。
けれど、抑うつ状態の極期では、「生きているだけで十分」なのです。
- 歯を磨けなかった
- 着替えられなかった
- 食べられなかった
それでもいい。明日できるかもしれないし、今はそれどころじゃないだけ。
「何もしない時間」が、回復の土台になります。
- 「刺激を減らす」
抑うつ状態の時期は、音・光・人の言葉・SNSの情報など、あらゆる刺激が過剰に重くのしかかることがあります。
- スマートフォンの通知を切る
- ニュースやSNSを見ない
- うるさい音から離れる
- 気を遣う人との連絡を控える
「静かな空間」「安心できる場所」に身を置くことが、心を守るシェルターになります。
■ 「気分が底」のときのミニ対処法
以下は、極期の中でも「もうダメかもしれない」と感じる時に、少しだけ使えるかもしれない方法です。
◯「今ここ」だけを見る
1日先のこと、来週のこと、将来のこと――今のあなたには重すぎます。
「今日の今、この瞬間だけ」に集中しましょう。
たとえば:
- 「今、布団の中にいられている」
- 「今、呼吸ができている」
- 「今、手が温かい」
未来のことを考えるのは、元気が少し戻ってからで大丈夫です。
◯「五感」に頼る
気分が動かないとき、**言葉よりも感覚(五感)**が助けになることがあります。
- 柔らかい毛布にくるまる(触覚)
- 好きな香りのハンカチを握る(嗅覚)
- あったかい飲み物を口に含む(味覚)
- 川の音や雨音を流す(聴覚)
- 好きなイラストや風景写真を見る(視覚)
「感じられるもの」に包まれることで、少し心が緩むことがあります。
■ いずれ必ず、波はおさまる
抑うつ状態の極期は、「ずっとこのままだ」と感じるほどつらい時間です。
でも、脳と体はゆっくりと、少しずつ、バランスを取り戻していきます。
薬やカウンセリング、休息が効果を発揮するのには時間がかかることもあります。
その間、自分を責めるのではなく、「いまの自分にできることだけをして、あとは休む」という姿勢を大切にしてください。
■ 周囲の人へひとこと
もしこの文章を、家族や友人が読んでいるなら、こう伝えたいです。
- 焦らせないでください
- 元気だった頃と比べないでください
- 「だらけてる」と誤解しないでください
- ただ「そこにいてくれる」だけで十分です
抑うつ状態の極期にある人にとっては、「生きていていい」「自分を否定されない」という感覚が何よりの支えです。
おわりに
「抑うつ状態の極期」は、見えない嵐の中にいるようなものです。
自分の中の「できること」「できないこと」の線引きをあいまいにして、とことん休んでいい時間にしてあげてください。
いつか、波は少しずつ引いていきます。